ぎっくり腰の症状
日本人の訴えの中で最も多い腰痛。
令和元年(2019年)国民生活基礎調査「世帯員の健康状態>自覚症状の状況」によると、腰痛は男性で1位、女性は1位の肩こりに僅差で2位にランクインしています。
そんな腰痛には、「ぎっくり腰」による痛みも含まれます。
ぎっくり腰になると動けないほどの激しい痛みが続き、家事ができなくなったり仕事に行けなくなったりと、日常の生活が送れなくなります。
実際にぎっくり腰を経験した方や、周りの人がぎっくり腰になったという方も多いのではないでしょうか。
しかし、ぎっくり腰についてはまだわかっていないことが多く、原因もさまざま。いまだ有効な治療法は見つかっていません。
鍼灸治療でぎっくり腰の痛みを和らげ少しでも動きやすくすることで、日常の生活に戻っていくことができます。
ぎっくり腰の特徴と症状
- ぎっくり腰とは
- ぎっくり腰は、不意に動いた時や急に腰をひねった時、重い荷物を持ち上げた時などに起こりやすい疾患です。
正式には「急性腰痛発作」といい、動けなくなるほどの激しい腰痛を伴います。日本では急性腰痛発作を「ぎっくり腰」と呼んでいますが、海外では「魔女の一撃」と呼ぶくらい世界的にも有名な疾患です。
「ぎっくり腰は安静にしていれば大丈夫」と思われがちですが、今ではその常識はまちがった認識とされています。
また、ぎっくり腰を自分で判断して放っておくのは危険で、思わぬ疾患が潜んでいる可能性もあります。
- ぎっくり腰の特徴
- ぎっくり腰は動けなくなるほどの激しい腰痛が出ることもあれば、「じんじんする痛み」「ピリッとする痛み」「筋肉がつっぱる痛み」などの症状が出ます。
いずれにおいても、ぎっくり腰になった瞬間は普通の日常生活が送れないほどの痛みです。しかし、この痛みのほとんどは数日から1~2週間かけて徐々に改善していくと言われています。
- ぎっくり腰の原因
- ぎっくり腰は、腰に負担がかかり過ぎることで起こります。
「重い荷物を持ち上げた」「無理な姿勢をとって腰をひねった」「デスクワークの人が久しぶりに運動した」などで起こります。
ぎっくり腰は非特異的腰痛とも呼ばれ、いまだ原因不明です。ぎっくり腰の多くは椎間関節に関節包や滑膜が挟まってしまった状態と考えられていますが、椎間板ヘルニアである可能性もあり足の痛みを伴う場合もあります。<
また、ぎっくり腰は靭帯の損傷・脊椎圧迫骨折・腰椎すべり症・腰椎分離症などの可能性もあるので、1つの原因に絞ることは難しい疾患です。
- ぎっくり腰の分類
- ぎっくり腰は痛みの場所や期間によって分類することができます。
痛みが腰だけの場合は、数日から1~2週間ほどで治ることが多いです。しかし痛みが足にまで広がっている場合は要注意。椎間板ヘルニアの可能性があるので、念のために整形外科を受診しましょう。
また、激しい腰の痛みが2週間以上続くようだったら靭帯の損傷・脊椎圧迫骨折・腰椎すべり症・腰椎分離症などの可能性もあるので、放っておかずに整形外科の受診をおすすめします。
ぎっくり腰の治療と予防
さまざまな病態が考えられるぎっくり腰ですが、そのほとんどは数日から1~2週間で痛みが引いていき、自然に治っていきます。そして「ぎっくり腰=安静にする」という治療は、現在のところ非常識となっています。
オーストラリアの研究で、腰痛のある患者さんに対して「安静にする治療」「施術をする治療」「普段の生活を続けてもらう治療」の3つを試したところ、普段の生活を続けてもらった方が腰痛は改善することがわかりました。一方で、安静にし続けた患者さんは、良くなるどころか腰痛が悪化してしまったのです。
「ぎっくり腰は安静にしないといけない」という強い思いが脳の中で悪い働きをし、腰の痛みを増強させてしまうメカニズムがあると考えられています。
このように、ぎっくり腰は安静にすればいいわけではなく、痛みの範囲で日常生活を送るほうが早く良くなっていきます。
ぎっくり腰になって数日経ち、少しずつ痛みが引いて動けるようになったらストレッチや体操をするのも有効です。ぎっくり腰のストレッチや体操をするときのポイントは、痛みがない方向に動かしていくこと。痛みが強くなる運動は危険なのでやめておきましょう。
ぎっくり腰に効果的な体操には「ウィリアムズ体操」と「マッケンジー体操」があります。
ウィリアムズ体操は腰を曲げる運動で、腰を反らして痛みが強くなる場合に行なってください。
マッケンジー体操は腰を反らす運動で、腰を曲げて痛みが強くなる場合に行なってください。
どちらも簡単な体操なので、お家でひとりでもできます。ぎっくり腰の予防にもなるのでぜひ試してみてください
ウィリアムズ体操
- 腹筋(おなかに力を入れる):
あおむけに寝そべって膝をたてリラックスした姿勢を作る。おへそを見るようにゆっくり頭を浮かせる。これを10回程度繰り返す。
- 大臀筋(おしりに力を入れる):
あおむけに寝そべって膝をたてリラックスした姿勢を作る。お尻に力を入れて腰を持ち上げる。これを10回程度繰り返す。
- 両膝を胸に:
あおむけに寝そべったまま両膝を胸に近づけ身体を丸めるように。背中や腰の筋肉が伸びていることを感じましょう。
- 前屈:
座って両足を伸ばし前屈。もしくは仰向けに寝そべって両足を天井に伸ばす。太ももの裏側が伸びていることを感じましょう。
- 股関節ストレッチ:
腕立て伏せの体勢で両腕を伸ばし、片足を曲げて胸に。股関節まわりをストレッチ。
- 立ったり座ったり:
ゆっくりと立ったりしゃがみこんだりを繰り返す。不安定な場合は椅子や机など支えを持って行いましょう。
マッケンジー体操
- うつぶせ寝:
顔を横向けにしてうつぶせに寝てリラックス。
- ひじ立て:
うつぶせ寝の状態から両ひじを肩の下あたりについて上体をゆっくり起こす。その体勢で2-5分。ゆっくりとうつぶせ寝に戻す。
- 上体反らし:
うつぶせ寝の上体から両手のひらを肩の下あたりにつき、両腕を伸ばしていき上体を腰までっくり反らす。ゆっくりうつぶせ寝に戻す。これを10回程度繰り返す。
- 背中反らし:
立って両手で腰を支え上体を後ろにゆっくり反らす。まっすぐ立った状態にゆっくり戻す。これを10回程度繰り返す。
ぎっくり腰は治療も大切ですが予防も大切です。
日頃から適度な全身運動(散歩やウォーキング)、ウィリアムズ体操やマッケンジー体操などをしていきましょう。また「重い荷物を持つ時は2人がかりでする」「腰をひねる運動は避ける」など普段の生活習慣も重要になってきます。
鍼灸治療で期待できる効果
ぎっくり腰で安静にし過ぎるのは良くないことがわかりましたが、痛いのに無理に動けと言われても難しいですよね。
そんなときには、鍼灸治療でまず痛みを和らげることが効果的です。
鍼灸治療では、五臓(肺・心臓・脾臓・肝臓・腎臓)のバランスを整え、人間にもともと備わっている自然治癒力を高めていくので、ぎっくり腰が早く治る可能性があります。
特に腰痛においては、腰や背中の筋肉が異常に緊張していたり、ゆるみ過ぎていたり、少しの刺激で痛がったりするなどの部分があります。これらを元の正常な状態に近づけていくことによって、腰痛を和らげていきます。
鍼灸治療により筋肉がストレッチされ、腰痛が和らげば普段の生活に戻れます。
当院ではぎっくり腰に対する治療も行なっているので、つらい腰の痛みに悩まれている方はぜひお気軽にご相談ください。