パーキンソン症候群(パーキンソニズム)

パーキンソン症候群の症状

パーキンソン病」は脳の一部に異常が起き、手足のふるえや小刻みの歩行、動作緩慢などが起こる疾病です。
50代以降に起こりやすく、日本では60歳以上の100人に1人が罹っているといわれます。
1817年に英国の外科医パーキンソン氏が発見し、それ以降さまざまな研究が重ねられてきました。

そんな中、パーキンソン病と同じ症状があるのに、パーキンソン病治療薬が効かなかったり、画像検査で別の異常所見があったりと、異なる部分が見られるケースが増えてきました。

そこで、それらの総称を「パーキンソン症候群」と呼び、それぞれの病状に応じた病名がつくようになりました。
治療方法もそれぞれ違い、パーキンソン病との見極めが非常に大切になっています。

パーキンソン病とパーキンソン症候群に見られる症状

この二つの疾病には以下のような共通の運動症状と非運動症状があり、これをパーキンソニズムといいます。

運動症状

静止時振戦
発病の初期段階で起こりやすいのが「振戦(しんせん)」です。目覚めた時から震えが起こり、何もしていない時や横になっている時でも症状が出ます。左右どちらかの手足に震えが来ることが多いのですが、次第に両方に広がっていきます。
寡動・無動(かどう・むどう)
動きが鈍くなり、自分が想像しているような動作が取れなくなってきます。最初の1歩が踏み出せない「すくみ足」になったり、話し方に抑揚がなくなったり、手の動きが悪くなって文字が小さくなったりといった症状が現われます。
筋固縮・筋強剛(きんこしゅく・きんきょうごう)
腕や肩、指、膝などの筋肉が硬直し、動かしにくくなる症状です。関節の曲げ伸ばしもスムーズに行かなくなります。また、顔の筋肉がこわばるので、無表情になってきます。
姿勢反射障害
身体のバランスを取ることが困難になり、転びやすくなる、方向転換できない、止まれないといった症状が起こり、転倒による骨折の危険もあります。

以前はこの4大運動症状のうち、2つ以上の症状がある場合に「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」と診断されていました。

しかし2018年にガイドラインが改訂され、現在は「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」の診断は、「寡動・無動(運動緩慢)」が必須、加えて「静止時振戦」か「筋固縮・筋強剛」の少なくともどちらか1つの症状がみられること、と変更されています。
これは、姿勢反射障害が初期には見られないためです。

非運動症状には以下のような症状があります。

非運動症状

自律神経症状
自律神経の不調による便秘や発汗、頻尿、起立性低血圧(立ち眩み)、むくみ、冷えなどが起こります。
感覚障害
主ににおいがわからなくなる嗅覚障害が起こります。
精神症状
不安感や抑うつ、無気力、無関心、幻覚、妄想など精神状態が不安定になります。
睡眠障害
不眠や浅い睡眠、日中の眠気などの症状が出ることがあります。

パーキンソン症候群の疾患と治療

パーキンソン症候群は主に脳梗塞や薬の副作用によって起こるとされ、原因によっては投薬やリハビリで寛解することもあります。
代表的な病気とその治療法には、このようなものが挙げられます。

脳血管障害性パーキンソニズム

脳梗塞や脳出血が多発して運動機能が障害を受けると、パーキンソン病と似た症状が現われます。

<治療法>

この疾病の場合、脳血管の障害が原因なので、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などのリスクを下げることが大切です。
その上で症状に合った薬剤を服用することによって、症状は改善します。

薬剤性パーキンソニズム

薬の副作用でパーキンソン病に似た症状が起こります。
抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、降圧剤、制吐薬などの中で、ドパミン拮抗作用を持ったものを服用した場合に発症します。

<治療法>

ほとんどの場合、原因となった薬剤の服用を中止することで改善します。
しかし、中にはパーキンソン病に進行してしまうケースもあります。

これは、遺伝性の家族性パーキンソン病などで元々素因があり、ドパミン拮抗薬を服用することで発症してしまったと考えられています。

進行性核上性麻痺

大脳や脳幹、小脳などの神経細胞が減少するために起こります。
目の動きが悪くなり、「下が見にくい」「転倒しやすい」「話しにくい」「飲み込みにくい」といった症状が初期から現れます。

<治療法>

現在のところ、パーキンソン病治療薬が使われていますが、効果は一時的です。
主な治療はリハビリで、筋力維持やパランス調整、発声練習、嚥下訓練などが行われます。

多系統萎縮症

小脳皮質や橋核、脳幹や脊髄の自律神経核など、神経細胞が変質して起こり、症状によって線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群などに分類されます。

初期から小脳の障害症状が出ることが多く、体幹のバランスを取れずふらつきやすくなります。
また、呂律が回らない、手が震える、尿失禁、排尿困難、発汗障害などの自律神経症状も起こってきます。

<治療法>

歩行障害や手のふるえなどには甲状腺刺激ホルモン、こわばりには抗パーキンソン病薬、自律神経症状には調整薬など、各症状に合わせた投薬が行なわれます。
また、障害の程度に合わせたリハビリも行ないます。

大脳皮質基底核変異症

前頭葉と頭頂葉が萎縮して起こります。

パーキンソン病の症状に非常に似ているため診断が難しいのですが、手が思うように動かせない、片手が勝手に動く、動作がぎこちない、身体の片方に強い症状が出るといった特徴から判断されます。

<治療法>

現在のところ確率した治療法はありませんが、パーキンソン病と同様L-ドパを服用します。
また、手の異常な動きにはクロナゼパムやボツリヌストキシンなど筋肉の緊張を和らげる薬剤の投薬や注射も行なわれています。

あわせて、リハビリで身体の機能が低下しないようにすることが大切です。

鍼灸治療で期待できる効果

当院で行なう鍼灸治療は、パーキンソン症候群(パーキンソニズム)における薬物治療やリハビリテーションの効果を高め、さまざまなパーキンソン症状を緩和させることを目的にしています。

パーキンソン症候群の症状には、手のふるえ、筋肉の硬化や無表情になる仮面様顔貌など運動症状だけでなく、さまざまな非運動症状が起こることが少なくありません。
発汗異常や起立性低血圧、睡眠障害排尿障害、便秘、抑うつ、幻覚、嗅覚障害、味覚障害などがあり、さらにこれらに伴うストレスなどによって、精神面への影響が大きいのです。

バランスが崩れた自律神経を整えることによって、交感神経と副交感神経の働きが正常になると不快な症状が落ち着いてきます。

湯川鍼灸院では、患者様ひとりひとりの症状に合わせ、内臓や筋肉、神経、血液の流れを整える施術を行ないます。
すると表情が豊かになってきたり、手足のこわばりやふるえが収まったりといった改善がみられるようになり、日常生活の質が上がって行くのです。

施術による変化を実感できるまでには、数か月かそれ以上かかることもあります。

しかし、あきらめずに治療を続けることで、パーキンソン症候群の進行を抑え、毎日を穏やかな気持ちで過ごすことができるようになってきます。
すると脳内でドパミンが分泌されやすくなり、自然治癒力も高まっていきますよ。

湯川鍼灸院では訪問診療も行っています。
症状がつらく外出が困難な日もあるかもしれません。ぜひご予約の際に「訪問診療希望」とお伝えください。