夏でも手足が冷たくて靴下を履かないと眠れない、暖房がきいた部屋にいても寒い、と悩む女性は少なくありません。
リンナイ株式会社が2016年に調査したところによると、20代~40代の女性の約8割が冷え性と感じている、という結果が出ています。
また、この調査では同年代の男性の約4割も冷え性を自覚しているそうで、今や「冷え性」は国民病になりつつあります。
冷え性とは、回りの人は寒さを感じていないのに、手足などの冷えを強く感じつらい症状をいいます。
特に女性に多い冷え性の症状には、このようなものがあります。
さらに、これらの状態が悪化するとむくみや肩こり、腰痛、頭痛、胃腸障害、膀胱炎、不眠、集中力の低下、肌荒れ、不妊などが起こりやすくなります。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、緊張したりストレスを感じたりすると交感神経が活性化します。
交感神経は血管を収縮させる作用があるため、血液の流れが悪くなります。
血液には筋肉が生み出した熱を全身に運ぶ働きがあり、血行が悪くなると熱が手足まで届かなくなってしまうのです。
自律神経の乱れのほかに、特に女性の場合は鉄欠乏性貧血によって冷え性になることがあります。
鉄は赤血球内のヘモグロビンの成分で、ヘモグロビンは全身に酸素を送る役割があります。
そのため、鉄が不足するとヘモグロビンの量が減り、全身が酸欠状態になって冷えを感じやすくなるのです。
熱は、筋肉が動くことによって生まれます。
そのため、筋肉が不足していると身体を温めることができなくなります。
特に女性はホルモンの関係で筋肉がつきにくいので、冷え性になりやすいのです。
また、男性の場合は運動不足で筋肉が減り、さらに内臓脂肪や皮下脂肪がついて基礎代謝が落ちていることが冷えの主な原因です。
実際より小さめのサイズの下着や、身体に張り付くような服などは、血管を圧迫して血液の流れを悪くします。
また、伸縮性のない服は動きにくいため熱が生まれず、これも冷え性の原因となります。
38℃~40℃のぬるめのお湯に15分程度浸かると全身の血管が広がり、血流が良くなります。
また、副交感神経が優位になるのでストレスで凝り固まっていた身体がほぐされ、自律神経の働きを正常にしていきます。
下半身には全身の筋肉の7割が集まっています。
そのため、意識して下半身を動かすことで全身の血行が良くなっていくのです。
足を少し高く上げて散歩やウォーキングをしたり、階段の昇り降りをしたりするだけでも違ってきますから、毎日の生活に取り入れましょう。
冬はもちろん、夏でも冷たいものは避け、常温以上の温度のものを摂りましょう。
また、冷やしていなくても身体を冷やす食材があります。
南国産のもの、例えばコーヒーや果物は身体を冷やす作用が強いので、できるだけ避けましょう。
また、さとうきびも南国で採れるものなので、砂糖は身体を冷やします。
さらに、砂糖に含まれる炭水化物が蓄積されると中性脂肪に変化し、血液をドロドロにしてしまい、血行不良を起こしますから、少量をゆっくりいただきましょう。
炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルはすべて取ることでお互いに助け合い、消化吸収を良くして熱を生み出してくれます。
また、しっかり噛むとより熱を生み出す力が強くなります。
昔から「頭寒足熱」といわれ、足を温めると健康に良いとされています。
下半身に着る下着や衣類を1枚多めにしましょう。
なお、身体にぴったりしたものや伸縮性がないものは血行を悪くする原因となります。
ある程度ゆったりしたものを選んでください。
身体には、冷えに良いといわれるツボがたくさんあります。
簡単にできる場所をいくつかご紹介しますので、息を吐きながら数秒押さえることを5回~10回ずつ繰り返しましょう。
西洋医学では冷え性という病名はなく、血行不良による症状の一つと考えられています。
そのため、ビタミンEや血管を広げる薬を処方し、血流を良くする治療が主流となっています。
また、生活習慣病など別の原因から来ていると思われるものに対しては、そちらの治療によって冷え性の改善を狙います。
一方、東洋医学では冷え性の原因をその症状と体質によって細かく分け、それに合った治療を行なっています。
冷える部分が全身か下半身か手足か、ストレスがないか、他にはどんな症状が出ているのか、といったことを患者様に詳しく伺い、一人一人の根本の原因を突き止めるのです。
冷え性には虚弱体質や疲労が溜まっているために熱を生み出せなくなっているケースもあれば、熱は作れているのに身体の隅々まで送る力がないケースもあります。
それぞれの症状や体質に合わせて的確な治療ができるのが、鍼灸の強みです。
冷えの治療は東洋医学が得意とする分野ですので、お悩みの方はぜひご相談いただきたいと思います。