更年期障害・ホットフラッシュ

更年期障害・ホットフラッシュ

更年期はどんな女性にも訪れるもの。
その時に起こるさまざまな不快な症状を更年期障害といい、女性ホルモンの分泌量が減ったことで起こります。
更年期障害の度合いは人によって違い、ほとんどなかったという女性もいれば、女優の木の実ナナさんのように動悸や息切れ、のぼせやホットフラッシュ、最後には抑うつで自殺まで考えた、という人もいます。

また、最近は男性にも更年期障害があることがわかってきました。
こちらは男性ホルモンの減少によって起こるもので、女性の更年期障害ほどではないものの、抑うつや倦怠感、筋力低下などの傾向があります。
ビートたけしさんや吉田拓郎さんも、男性更年期障害の経験者だそうです。

更年期障害は程度の差こそあれ、誰もが通る「道」です。
道ですから行き止まりではなく、必ずいつかは治りますから、あまり思い悩まないでくださいね。
また、正しい治療を行なえば症状をかなり軽くさせることができますから、つらいと感じたら、1日も早く医療機関を受診しましょう。

更年期障害の症状と原因

更年期障害の代表的な症状

生理が12か月以上起こらない状態を閉経といい、「更年期」とは閉経前後の各5年、一般的には45歳~55歳頃を指します。
この時期に起こるさまざまな症状のうち、日常生活が困難になるほど重いものを「更年期障害」と呼んでいます。

更年期障害には以下のようなさまざまな症状があります。

精神的な症状
イライラ、不安感、落ち込み、頭痛、めまい、抑うつ、不眠 など
自律神経失調による症状
動悸、発汗、寝汗、むくみ、冷え、ホットフラッシュ など
皮膚や粘膜の症状
ドライアイ、喉の渇き、皮膚の乾燥 など
胃腸の症状
便秘、下痢、胃もたれ、胸やけ、吐き気 など
全身や運動機能の症状
肩こり、背中の痛み、腰痛、関節痛、ふるえ、しびれ など
泌尿器・生殖器系の症状
尿失禁、生理不順 など

中でも多いのが、女性の6割が経験するというホットフラッシュです。
突然身体が熱くなったり顔が赤くなったりして心臓の動悸が激しくなり、それと同時に汗が噴き出てきます。
冬でも汗が止まらず、暑くて夜も眠れなかったり、自分だけ汗だくで回りの目が気になったりと、肉体的にも精神的にも大きなストレスになります。

これらの症状はほとんど出ない人もいればいくつも現われる人、出る日もあれば全く出ない日もあるなど、一定しません。

年齢による症状の変化

また、症状は年齢によって変わってきます。

40歳~50歳前後
生理の回数の減少や生理時以外の少量の出血などの月経異常
42歳~55歳前後
自律神経の乱れによるのぼせ、ホットフラッシュ、めまい、発汗など
45~57歳前後
倦怠感、疲労感、不眠、不安、イライラなどの精神的症状

また、更年期以降老年期には以下のようなことが起きやすくなります。

53歳頃
失禁、萎縮性膣炎、外陰掻痒症など泌尿器・生殖器の病気
55歳頃
動脈硬化、脳卒中など心臓や血管の病気
56歳頃
骨粗しょう症や骨折

なお、男性更年期障害は40代以降ならいつでも起こりうるもので、人によっては10年以上続くケースもあります。

更年期障害の原因

更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって自律神経が乱れて起こるものです。

女性ホルモンは卵巣で作られていますが、作るよう指令を出しているのは脳の視床下部です。
まず視床下部が脳の下垂体に指令を出し、それを受けた下垂体が卵巣に分泌するよう指令を送ります。
それを受けて、卵巣内でホルモンが作られるのです。

しかし加齢とともに卵巣機能が低下すると、作ることができなくなってきます。
分泌量が少ないと視床下部がホルモンを出すようどんどん指令を送るのですが、分泌できません。
これが繰り返されると、視床下部が混乱してしまうのです。

視床下部は女性ホルモンだけでなく、自律神経をコントロールするところでもあります。
そのため、混乱が自律神経にも影響を及ぼし、さまざまな不快な症状が起こってくるのです。

更年期障害の治療

更年期障害の治療は、症状に合わせていくつかの方法から選択するか、あるいは組み合わせて行ないます。

ホルモン補充療法

減ってしまったエストロゲンを少量補う方法です。
貼り薬と塗り薬、飲み薬がありますが、エストロゲンのみだと子宮内膜増殖症を引き起こす危険性があるため、基本的にはプロゲステロンという黄体ホルモンと一緒に使用します。

ホルモン補充療法は効果が高く、自律神経の症状によく効き、特にホットフラッシュを抑える作用があります。
その他、骨粗しょう症や高血圧、コレステロール値の減少などにも効果があります。

なお、男性の場合は、男性ホルモンのテストステロンを注射や塗り薬で補充する方法が一般的です。

漢方治療

漢方薬はさまざまな生薬を配合してあるため、1つの処方で多くの症状を軽くすることができます。
よく使用されるのが加味逍遙散(かみしょうようさん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などで、患者様の体質や体力に合わせて処方します。

向精神薬治療

イライラ、不安感、落ち込み、頭痛、めまい、抑うつ、不眠など、精神面での障害が非常に強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬などを使用することもあります。
最近は副作用がほとんどなく、自律神経系の症状にも効果が認められた抗うつ薬がよく用いられています。

サプリメント

更年期に不足しがちな栄養素をサプリメントで摂る方法です。
特に大豆イソフラボンはエストロゲンに似た作用をすることが知られており、更年期障害への効果が期待されています。
その他にも、アメリカで更年期障害の改善によく使用されるブラックコホシュやレッドクローバー、ザクロ、ローヤルゼリーなどがあります。

サプリメントは薬と違い、すぐに変化が出ることはありません。
また、他の治療薬との相性が悪い場合があるので、必ず医師の判断の元で服用することが大切です。

鍼灸治療で期待できる効果

鍼灸治療は日本で古くから行なわれて来た治療法で、今ではWHOや米国国立衛生研究所からもその効果を認められている代替治療です。
更年期障害でも、ホルモン治療や漢方薬、向精神薬などと併せて行なうことで、相乗効果が期待できます。
更年期障害の場合、性ホルモンの減少とそれに伴う自律神経の乱れが大きく関係しているため、これらを調和させることで症状を改善していきます。
鍼灸治療で卵巣機能の低下をできるだけおだやかにしたり自律神経を整えたりすることで、身体と心、上半身と下半身のバランスがよくなると、お薬の効果が出やすくなるのです。

更年期障害は男女問わず誰にでも起こることで、適切な治療を受けることで症状を軽くすることができます。
木の実ナナさんは、ファンの医師が適切な治療をしてくださったことで、ひと山乗り越えられたそうですし、タレントの渡辺正行さんも治療を受けて完治しています。
しかし薬を飲んでも効果が弱い、何とかおさまってはいるけれどすっきりしない、そんな時には鍼灸治療をお試しください。