アトピー

アトピーの症状

アトピー性皮膚炎は、大人より子供の方が発症しやすいといわれている疾患です。
文部科学省の令和元年度 学校保健統計調査によると、幼稚園児が2.31%、小学生3.33%、中学生2.87%、高校生2.44%となっており、前年度と比べると幼稚園児と中学生は増えています。

また成人後もアトピーが治らなかったり、成人後発症する「成人型アトピー性皮膚炎」も増えています。

厚生労働省の2017年度 患者調査によるとアトピー患者は51.3万人おり、3年に一度の調査のたびに増えています。
2017年10月の例として挙げられたアトピー患者数を見ると、0歳~19歳が約39.8%、20歳以降が60.2%と、成人のアトピー患者のほうが多くなっています。

アトピーの症状

アトピーの症状には、いくつかの特徴があります。

そしてアトピーの症状は4段階に分かれます。

軽症
赤みのあるかさつきができる。皮膚がささくれ立ったり白い粉をふいたようになったりして皮がむけてくる。
中等症
軽症が全体的に悪化し、赤みやささくれ・皮むけが悪化する。体表面積の10%未満が目安。
重症
腫れと赤みがひどくなり盛り上がる。粉をふいて皮がむける症状がかなりひどくなる。体表面積10%以上30%未満が目安。
最重症
重症の症状が体表面積の30%以上にみられる。

これらの症状は一定ではなく、軽症になったり重症になったりを繰り返します。

アトピー性皮膚炎診察ガイドライン2018によると、早いお子様では1歳6ヶ月頃に発症し、小学1年生以降大学生までは中等症が増えるようです。

アトピーの原因

日本皮膚科学会では、アトピー性皮膚炎ガイドラインとして定義を定めています。
素因として以下のことが挙げられています。

1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれ、あるいは複数の疾患)、または
2)IgE抗体を産生しやすい素因

引用:アトピー性皮膚炎 Q3 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

簡単にいうと、親族に何らかのアレルギー疾患がある場合や、IgE抗体という即時型アレルギーを引き起こす物質を作りやすい体質の場合、アトピーが出やすいアレルギー体質だということです。

またアトピーの発症原因として、「皮膚のバリア機能低下」と「外部からの皮膚への刺激」が挙げられます。

皮膚のバリア機能低下

皮膚の一番上にある角質には、外部からの刺激や雑菌が侵入しないようにしたり、水分の蒸発を防いだりするバリア機能があります。
しかしアトピーのお子様の場合バリア機能が弱く、刺激やアレルゲンが入り込みやすくなっています。

すると体内でIgE抗体というタンパク質が作られ、これとアレルゲンが結合してヒスタミンなどのかゆみ成分が分泌されるのです。

外部からの皮膚への刺激

一般的にアレルゲンと呼ばれるものの他にも、多くのものが刺激となりアトピーが発症します。

カビや花粉、ハウスダスト、ダニ、動物の毛、植物、汗、高温、高湿、乾燥、毛羽立った線維、直射日光、石けん、洗剤、金属、化粧品 など

これら外部からの皮膚への刺激によってかゆみが起こり、掻くことでヒスタミンが放出されさらにかゆみが悪化する、という悪循環に陥ります。

ストレス

さらにストレスによってアトピーが悪化することがわかっています。
かゆみそのものや外見へのストレス、さらにいつまで続くのかという不安などが自律神経を乱し、それが免疫細胞にも影響を与えると考えられています。

アトピーの治療法

病院での治療法

現在のところ、アトピーを完治させる薬は開発されていません。
そのため、皮膚の炎症を抑える治療が主になります。

最も使用されるのがステロイドの塗り薬で、症状によって強さの違う5段階のステロイドが処方されます。
副作用が出にくいタクロリムスは、ステロイド使用によって炎症が落ち着いたときに塗ると効果が出やすいです。

その他には、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、ステロイド内服薬などの内服療法や、紫外線療法などもあります。

なお漢方治療として、「消風散」や「補中益気湯」を処方している医療機関もあります。
「消風散」は患部がじゅくじゅくしてかゆみが強い場合に用いられ、「補中益気湯」は倦怠感や胃腸虚弱などの症状に効果があります。

しかし漢方薬は体質に合っていないと効果が出にくくなるため、現在のところ積極的には使われていません。
また「消風散」や「補中益気湯」はいずれも甘草という生薬が含まれており、長期使用は偽アルドステロン症などを引き起こす危険性があるため、必ず漢方薬に詳しい医師の元で使用してください。

自分でできる治療法

アトピーのお子様の肌はバリア機能が弱く、水分が蒸発したり雑菌が侵入したりしやすくなっています。
何より保湿剤を塗って肌の乾燥を防ぐことと、毎日ぬるめのお湯での入浴やシャワーで清潔に保つことが大切です。

またダニやほこりを減らすために、こまめに掃除したり、窓を開けて空気を入れ替えたりすることも、アトピーの悪化を防ぐことにつながります。

さらに、肌への刺激が少ない綿素材の服を選び、洗濯時は洗剤が残らないよう充分すすぐようにします。

もう一つ大切なことに、ストレスを溜めないことです。
さまざまなストレスがアレルギーの大きな原因になるため、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。なお生活習慣の乱れはストレスの原因となるので、規則正しい生活や食生活、適度な運動や質の良い睡眠なども心がけましょう。

当院で行なう鍼灸治療で期待できる効果

アトピーの症状がひどく、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤などを使用しても一進一退で不安を感じていたり、できればステロイドを減らしたい、止めたいというお子様やご家族は少なくありません。

ステロイドは非常に有効な薬ですが、その分副作用も出やすく、それがストレスとなって悪化してしまうこともあります。
またご自分の判断で突然止めてしまうと、抑えられていた症状がリバウンドしてしまい、じゅくじゅくが止まらなくなったりむくみや発熱、脱毛などの症状が出たりしやすくなります。

当院では無理に薬を止めるのではなく、お子様の症状に合わせたツボを鍼灸で刺激し、自己治癒力を高める施術を行なっております

東洋医学的にみると、アトピーの原因には先天的な虚弱体質の場合や、作られたエネルギーがうまく回らない(気滞)、血行不良(瘀血(おけつ))、貧血(血虚(けっきょ))、水分代謝が悪い(水毒)などさまざまなことが考えられます。

お子様の体質を見極め、最も適したツボを刺激することで、症状を和らげていきます。
症状は体調や季節・ストレスなどによって変化しますから、そのときどきの症状に合わせた治療を行ないます。

アトピーは完治が難しいとされていますが、適切な治療によって症状をできるる限り抑えることは可能です。
お子様のアトピーでお悩みの方はもちろん、ご本人がアトピーという方も、きめ細やかな対応ができる鍼灸治療をお試しください。