パーキンソン病

パーキンソン病の症状と原因

パーキンソン病は高齢者だけでなく若い方でもなる可能性がある病気です。難病情報センターによると、パーキンソン病の発症年齢は50-65歳に多く見られ、高齢になると増加していく傾向があります。

日本では現在1,000人に1人、60歳以上では100人に1人が罹っているといわれ、有名人も少なくありません。
元ボクサーのモハメッド・アリ氏、タレントの永六輔氏、芸術家の岡本太郎氏、作家の江戸川乱歩氏や三浦綾子氏、映画評論家の小森和子氏などの他、あのアドルフ・ヒトラーもパーキンソン病だったと伝えられています。

パーキンソン病は指定難病に指定されており、残念ながら現在のところ完治は難しいとされています。
しかし病院での治療や、当院の行なっているような補完代替治療によって、進行を穏やかにすることが可能なのです。

パーキンソン病の原因

パーキンソン病の原因は現在はまだはっきりと解明されていませんが、中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することでパーキンソン病の症状が起こることが分かっています。

大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少して起こります。ドパミン神経が減ると体が動きにくくなり、ふるえが起こりやすくなります。ドパミン神経細胞が減少する理由はわかっていませんが、現在はドパミン神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して蓄積し、ドパミン神経細胞が減少すると考えられています。

引用:難病情報センター | パーキンソン病(指定難病6)

パーキンソン病で起こる代表的な4つの運動症状と非運動症状

パーキンソン病の代表的な症状は、「振戦(しんせん)」「寡動・無動(かどう・むどう)」「筋固縮(きんこしゅく)」「姿勢反射障害」の4つです。

パーキンソン病・パーキンソン症状で起こる代表的な4つの症状
振戦(しんせん)
多くの場合、パーキンソン病発症の初期段階で振戦が起こります。
座っているときや横になっているときなど安静時、手や足に細かなふるえが起こります。通常は左右どちらか一方のふるえから始まります。
寡動・無動(かどう・むどう)
動作が非常に鈍くなります。動作の開始に時間がかかって開始した動作もゆっくりしかできなくなります。また最初の一歩が踏み出せない「すくみ足」が起こることもあります。
筋固縮(きんこしゅく)
腕や足、体幹の筋肉が強ばって固くなりスムーズに動かすことが困難になります。関節の曲げ伸ばしをした際カクカクした不自然な動き方(歯車現象)をします。
姿勢反射障害
歩き出すと途中から小走りになったり、軽く押されるとその方向へ突進したりします。重心が傾いてしまうと元の姿勢に戻すことが難しくなります。

これらの運動症状以外で、身体の動きと関連しない症状を非運動症状と呼びます。
非運動症状には、自律神経症状、感覚障害、精神症状、睡眠障害などさまざまな症状があります。

自律神経症状
表情が乏しくなる「仮面様顔貌」や、「便秘」「発汗異常」「頻尿」、立ち上がるとき血圧が低くなることで立ちくらみを起こす「起立性低血圧」などがみられます。
感覚障害
においが分かりづらくなる嗅覚障害が知られています。
精神症状
不安や抑うつなど精神症状や、意欲の低下、幻視、幻覚、妄想などが起こることもあります。
睡眠障害
不眠や夜に何度も目が覚めてしまう中途覚醒などの睡眠障害がみられます。

パーキンソン病ではこれらの運動症状・非運動症状すべてが出現するわけではなく、症状の強さも人それぞれという特徴があります。

パーキンソン病は代表的な4つの運動症状がクローズアップされることが多いのですが、実は、非運動症状のほうが患者さま本人やご家族の生活の質(QOL)に与える影響は大きく、見逃してはならない症状です。

パーキンソン病の治療方法

残念ながら現時点では根本的にパーキンソン病を治す治療はありません。
したがってパーキンソン病の治療の目標は、症状を緩和し、日常生活を可能な限り良好に保つこと、となります。

薬物療法

パーキンソン病の治療は、脳内で減少しているドパミン神経細胞を補うためのL-ドパや、補助的な薬剤を使う薬物療法が中心になります。

長期間にわたって薬を飲み続けることになりますが、薬による副作用にも注意が必要です。胃腸の調子が悪くなったり、長期間飲み続けると幻覚やドパミン調節異常症候群などを引き起こすこともあります。
また飲み合わせにより、パーキンソン病の症状を悪化させてしまったり、パーキンソンの薬の効果を打ち消してしまう薬もあります。たとえば、認知症の薬であるアリセプトはパーキンソン症状を悪化させてしまう可能性があります。
使用する薬物は、医師が患者さまの症状に合わせて変更していきますので、薬の量や種類が増えても心配をせず、患者さま本人やご家族の方はささいなことでも医師に相談をすることが大切です。

手術療法

脳手術を行ってもパーキンソン病を完治させることはできません。手術療法は症状を持続的に緩和させることができる対症療法です。

リハビリテーション

パーキンソン病であらわれる運動症状に対してリハビリを行います。
全身の動きがスムーズになるよう、また可動域が少しでも広がり、筋固縮が進まないようにさまざまななストレッチを組み合わせて行います。

また、パーキンソン病の方は動きが鈍くなることや、転倒の不安から運動量が減る傾向にあります。リハビリで歩行訓練を行うことにより歩行を安定させると同時に筋力低下を防ぎます。

漢方薬や鍼灸による補完治療

パーキンソン病の補完代替医療である漢方や鍼灸では、振戦を抑えたり、筋肉のこわばりを緩和したり、また非運動症状である便秘や抑うつなどの精神症状に効果が多くみられています。

漢方であれば「抑肝散(ヨクカンサン)」「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」「厚朴(コウボク)」「白芍(ビャクシャク)」「柴朴湯(サイボクトウ)」などがパーキンソン病に効果があると言われています。
このうち認知症にもよく使われている「抑肝散(ヨクカンサン)」は、手足のふるえやけいれんにも有効であり、筋肉のこわばりを緩和したり、神経の興奮状態を鎮めて気分を落ち着ける効果があります。

パーキンソン病に対する鍼灸治療では、明治国際医療大学の研究において鍼治療によるパーキンソン症状や運動症状の改善が認められたことが報告されています。
→ 参考:パーキンソン病に対する鍼治療の臨床効果に関する研究(明治国際医療大学誌 2012;6;21-45)

いずれの治療法でもパーキンソン病を完治させることが現在の医学では困難です。
しかしながら、自分でできる最大の治療は「楽しいことをする」ことです。
なぜなら、楽しんでいるときや意欲をもって行動しているときには、脳内でドパミンが放出されていると考えられています。つまり「楽しいことをする」ことは、自分でL-ドパ療法を行っているようなものなのです。

鍼灸治療で期待できる効果

パーキンソン病の治療では、症状を緩和し、日常生活を可能な限り良好に保つために、薬を使い続けることになります。
長年の治療で薬が増え続けていくことに不安を感じている患者さまが多くいらっしゃいます。

そんな患者さまの力になれるのが鍼灸治療です。もちろん薬は使いませんし、長年治療している患者様でも使うツボの数や刺激量が増えることはありません。副作用もなく、安心して治療を受けていただけます。

パーキンソン病を抱える患者さまの鍼灸治療は、症状を抑えていくことが中心になります。
患者さまそれぞれで困っておられる症状は異なります。そのため、まずしっかりとお話を伺い、それぞれの患者さまに合った治療を提供していきます。

鍼灸治療では運動症状はもちろん、非運動症状に対しても効果が見られます。
パーキンソン病の薬の治療は、非運動症状に効きにくく鍼灸治療はそこをカバーできるものと考えています。

また個別の症状に対してだけでなく、患者さまごとに五臓のバランスに応じて全身の調整を行います。

私の経験では、鍼灸治療を始めてまず最初に変化が現れるのは表情に明るさが戻ることです。つまりパーキンソン病の特徴的な症状である、表情が乏しくなる「仮面様顔貌」が抑えられます。(数回から10回程度の鍼灸治療)
次に、振戦(ふるえ)がおさまります。(3か月~半年程度の鍼灸治療)

またパーキンソン病の患者さまは、腰痛や便秘の治療を希望される方も多いです。歩行障害に対しては鍼灸治療により、歩幅が広がり、歩行スピードが上がります。

1,2回の施術ですぐに効果が出るわけではありませんが、定期的に検査・評価していくことによって「いつのまにか振戦がおさまった」など効果を実感していただけます。

パーキンソン病の患者さまからいただいた鍼灸治療の感想

湯川鍼灸院について患者様の声

時間の積み重ねでいつの間にか楽に

女性(70代・YFさん)

「パーキンソン病です」と告げられてから20年が過ぎています。
初めて聞く名前でした。まわりをみてもそんな人はいないし、「なんで私だけが」と悔やんだりもしました。

治療に入って10年を過ぎた頃より先生を知って、鍼の方をやってもらうことになりました。
投薬治療とちがって、目に見えての効果があるとは思えません。はじめはそう思いました。

それでも時間の積み重ねでいつの間にか楽になっていると思うのですね。
10年も生きれたら、と思っていたのが20年を過ぎました。
あと何年生きれるかわかりませんが、先生にお世話になりながら余生がおくれたら、と思っています。

患者様の声原本

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